すかいうぉーかー

ECOでなんかやってます。(クローバーワールド)
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ショートストーリーその5 「アナザー・ワールド」
※注意書き
 本作は、前作までとはかなり質の異なるSSとなっています。
 以下の事項に当て嵌まる内容に嫌悪感を感じる方は、目を通されないほうが
 幸せかもしれません。

 ・テラカオス
 ********************

 あなたの目に映るものは、本当に、そこにありますか?
 あなたの耳に聞こえる音は、何が、奏でた音ですか?
 あなたにとって当たり前であることは、何故、当たり前なのでしょうか?
 
 『事実』の裏側にある、もうひとつの『事実』―――
 
 これは、世界の裏側を知ってしまった、とある青年の物語です。


 ********************
 
  <Act:1>
  
 ********************

 むかしむかし。
 と、言うほど昔でもないですが。
 あるところに、一人の哀しい青年がおりました。
 
 ボケても居ないのに、庭から落とされたり。
 昔は熱血だったのに、今はどの辺が主人公なのか解らない扱いをされていたり。
 同居人に(出番を奪うためだけに)滅殺されたり。
 大嫌いな父親に庭を急襲されて散々翻弄されたり。
 その結果、周りの人々から生暖かい同情の目で見られるようになったりしていました。
 彼自身はちっともそんなこと望んでいなかったのに。

 彼の名は、ライ・カーテット。
 黒髪に琥珀色の瞳。白の軍服に身を包み、槍と哀愁を手にアクロニアを駆ける、
 希代の、不遇。

 その日、彼が目を覚ました場所は、アップタウン南東の一角。
 人通りの少ない路地の隅っこでした。
 
 
「あれ?」
 頭を摩りながら身を起こしたけど、身体には何の変調もありません。
 辺りには何かそれなりの重量の物体が凄い勢いでぶつかったような形跡と、飛び散った瓦礫、生々しい血痕などが残されていて、何処からどう見ても「姉さん、事件です。」と言いたくなるような状況であると言うのに。
 そして、この状況に至った経緯も、見当はつくと言うのに。

「そうだよな。俺、確か、庭から落とされて」
 何時ものことと言えば、何時ものこと。
 初めこそ戸惑いはしたものの、二度、三度と繰り返されるうちに、何処か心が慣れてしまうのも、彼の資質と言うものでしょうか。
 落下中に、ただ落ちるのもしゃくだからついと言う理由で、空中で
 
 
  ヘ○ヘ
    |∧   荒ぶる鷹のポーズ!
   /
  
  
 とかやっていた彼を見ていたのは、お日様だけでした。
 ちょっと、哀しいですね。


「はーあ。ま、生きてるならいいか」
『そうだぞ青年』
「……」
『……』

 青年の傍から、不意に声が聞こえました。
 女性の声。丁度、耳元の辺りから。
 りぃん、りぃん、と響く羽音と共に。
 
 青年は知っていました。この声の主を。
 知っていましたが、彼は即座にその「誰か」を無視することに決めました。
 自己防衛のために。
 関わったらろくでもないことになるという、戦士としての(或いは、希代の不遇としての)直感に従って。

「幻聴だ」
『おい』
「幻聴だな」
『無視するな』
「幻聴に違いない」
『人の話を聞け』
「嘘だと言ってよバーニィ」
『所詮はザクマニアよ』
「ってそうじゃなくて」
『振っておいてスルーとは大した度胸だ』

 幻聴だ、と口にした時点で、無視していませんよ。ライ君。
 
 耳元から離れない声。
 36歩ほど歩いた時点で彼は渋々諦め、声の主に向き直りました。
 
 そこに居たのは、小さな妖精。
 白の羽根にきらきらと輝きを纏い、つぶらな瞳で彼を見ています。
 その姿は、彼の知っている「マリオネット・ニンフ」と酷似していました。
 
「何してる、魔王」
『何のことかな』
「声でバレバレだっつーの」
『し、知らん。今の私は、一介の妖精にすぎない』

 ―――妖精、です。
 彼には異論があるようですが、この場は自己申告に従うことにします。

「それで、何の用だよ」
『君の胸にある、その輝石[イシ]のこと。説明しておこうと思ってね』
「――は?」

 声に釣られて胸に手をやったところで、彼は、初めてその異変に気がつきました。

 普段身に付けているブラッディペンダントがありません。
 代わりに、翼を模した金装飾の中に、赤色に煌く宝石が輝いています。
 彼が見たことの無い、故に何処で手に入れたのかも解らない、その輝石を見て。
 彼は感じたのです。どこか異質な、胸のざわめきを。

 嫌な予感がする場合。
 その大元をさっさと放棄してしまうのが、一番手っ取り早い、と言うことを、彼は今までの経験から、知っていました。
 即ち、この場合は――
 
「これ、返すわ」
 胸のペンダントを、無理やり引き千切って、放ります。
 そして、彼はその行き先を見届けることなく、妖精から視線を外し、踵を返しました。
 それが不幸を招くものだと知っていたかのように、








『おおっと○向くんのタイガーショットォォォォ!!』
「ぐぼァァァァァァ!!?」








 背中に何か硬くてキラキラしたものが弾丸の如くブチ当たった衝撃に一瞬息が出来なくなり、勢いも殺せず、そのまま石畳に顔面から突っ伏す青年。
 痛みが身体中に広がります。そう、全身に。
 何故?
 当たったのは、背中だけだと言うのに。

『もっと大事に扱え。これは私のものと違い心臓の役割も兼ねている』
「あの何のことですかって言うか今思いっきり蹴り飛ばしたよねアナタ」
『奪われたり壊されたりすれば今度こそ本当にキミは死ぬ』
「ちょっと待ってそう言うことは先に言えよって言うかもっと大切にして俺の命」
『キミの新しい命―――武装錬k』
「うわああああああああ待てコラアアアアアアア!!」

 跳ね起き、一回転した上で、開いた手を水平に妖精のおでこに直撃させた彼。
 驚異的な生命力と、ボケに対する反応速度でした。
 反応しないと色々ヤバいと言う思考があったのかもしれませんが定かではありません。

『痛いな。何をするんだ。ちょっとした冗談じゃないか』

 妖精、ちょっと涙目です。そんなに痛かったのでしょうか。
 それとも彼の反応が面白かっただけか。
 恐らくは後者でしょうが。

「冗談にしては全身マジで痛いんですが説明して頂けませんかねコンチクショウ」
『まあ当たらずとも遠からずではあるのだが』
「渾身の力で俺の命を蹴飛ばすのは止めたまえよ」
『少○サッカーネタのほうが良かった?』
「尚悪い」


 かくして、物語は幕を開けたのです。






 ********************
 
  <Act:2>
  
 ********************


 妖精の告げた「この世界の事実」は、彼にとって、およそ理解出来ないものでした。
 
 このアクロニア大陸が、何者かに狙われていると言うこと。
 既に、一部地域は巨大化したウィリー・ドゥやミニー・ドゥやシナモン、ココナッツにライチーなどに襲われ、壊滅的な被害を受けていると言うこと。
 (何故ウサギばかりなのか、という彼の質問は、見事に無視されました)
 そして、もうひとつ。
 彼の胸に輝く、輝石の意味。

「つまり、この石は本来、強力な魔力を秘めていると?」
『そうだ』
「で、アンタはその“敵”に対抗出来るだけの資質を持った人間を探し出し、
 その石を託すつもりだったと」
『その通り』
「だけど俺がここで死に掛けてたんで、仕方なくその石を使って命を永らえさせた」
『うむ』
「故に、俺はこの力で、街を護らないといけないと」
『そうなるな』
「OKOK」
『理解して貰えたようで何よりだ』
「で? 今日はあれか、4月1日か? それとも俺の頭がトッピロキーなのか?」
『現実を直視するべきだぞ、不遇』
「不遇言うな」

 青年は、心底嫌な顔をしていました。
 そう。信じられる筈が無いのです。彼の知るアクロニア大陸は、もっと平和な世界でしたから。
 ここアップタウンも、人が沢山行きかい、露店が並び、様々な飛空庭商店――雑貨屋、酒場、宿屋などが存在していて。
 そんな破滅的な世界だなんて、信じられる筈がなかったのです。
 
 現実に、「ソレ」が、目の前に居なければ。

 そこに居たのは、ウサギの中でも最も弱い筈のウィリー・ドゥ。
 けれど、その大きさは青年の背の三倍はゆうにありました。
 乗る玉も三倍。路面は砕け、塀も、傍らにある家も、酷い有様になっています。 

 信じたくありませんでした。
 きっとこれは夢で、自分の身体は今頃白の聖堂で治療を受けているのだと。
 背負っていた槍を手にすることすら忘れ、彼は目前の光景を他人事のようにぼおっと見ていました。
 
 その手に持ったバーベルのような鈍器――それすらも、三倍の大きさでした――を、ウサギが彼に向かって振り上げ。
 そして、振り下ろしても、なお。
 彼は、動くことが出来なかったのです。
 
 
『――現実逃避は良いが。早く、覚悟を決めて貰いたいものだな』


 その一撃を防いだのは、妖精でした。
 細い腕を前に出し、ほの紅く輝く障壁で、辛うじて彼と妖精が潰されるのを防いでいます。
 それが魔術によるものなのか、或いは輝石の力と言うものなのか。彼には解りませんでした。けれど、ああ、やっぱりな、と思ったのです。
 防げるじゃないか。
 俺が居なくても、戦えるんじゃないか、と。
 
 それが、甘い考えだと思い知らされたのは、次の瞬間。
 
『長くは持たないぞ。私はあくまで選び手。奴らに対抗出来るほどの力は、無い』

 妖精の言葉には微塵の余裕もありませんでした。
 よく見れば、障壁は徐々に薄れ、或いはひび割れ、力を失っていきます。
 彼女の身体も、徐々に、徐々にと、地面に押し戻されているようです。

 この期に及んで。
 ようやく。彼は、覚悟を決めました。

 彼も、死にたくはありません。
 それに、いくら妖精の姿とは言え、そして違和感のある世界だとは言え、顔見知りがこのままやられるのをむざむざと許すほど、彼は臆病者でもありませんでした。
 その手に握る槍は、誰かを護るための力。
 普段が不遇であるとは言え、かつて騎士を目指したその志は、今も胸にあるのですから。

「――どうすりゃ、その力ってのを使えるんだ」
『ようやくやる気になったか』
「こんな状況じゃ仕方ねーだろさ」

 それに。
 ここがアクロニアだと言うのなら、仲間達も、居る筈なのです。
 彼と共に暮らしていた筈の幼馴染みや、沢山の友人達。
 こんな狂った世界で。
 どくん。
 鼓動が高鳴ります。
 彼女の話が全て真実だというのなら、奴らに対抗出来る術を持つのはごく一部。
 騎士団も殆ど機能せず、そして、人の命は――とても、軽い。

 なら。
 戦える力を持つのに、戦わないのは、それは、卑怯だから。
 護りたいから。
 だから、彼は――
 







「やってやるよ。俺がッ」
『よし。ならば、胸に手をかざして“ウェイク☆アップ!!”と叫b』
「悪い急用を思い出した」








 ――彼は、約0.5秒で前言を撤回しました。
 



 彼は選んだのです。
 逃げることと。
 妖精の言葉を鵜呑みにして、そのまま実行した場合に起こる、我が身の不幸とを比べて。
 即座に、前者を。
 
 後ろで妖精が何やら喚いていますが、彼はそれを無視しました。
 そうだ。やっぱりこれは夢なんだ。何度も、何度も、心の中で繰り返します。
 自分が何度も庭から落とされても、聖堂で復活するように。
 ギャグじゃなかったら死んでいるかもしれないけど、ギャグなら死にはしない。
 だから大丈夫、俺が居なくたって、誰も――








 ぐちゃっ


 鈍い、耳障りな音が、彼の耳に入りました。








 ――― え?
 
 おい。
 
 何だ。
 
 今の音は。
 
 後ろに迫ってる影は。
 
 あれは?
 
 妖精は?
 
 振り返った俺の目に入った、玉の隅、派手な、赤色は、誰の――?








「――ウサギの、分際でッ」
 定まらない心。動揺を隠し切れぬままに、力任せに突き出した槍はしかし、玉の表面すら破ることが出来ず。
 自身の遥か上空から振るわれた鈍器に吹き飛ばされて、彼は強かに壁に叩きつけられました。
 口の中が鉄っぽい味で満ちていきます。
 
 勝てないのか。
 俺は、コイツに、やられるのか。
 畜生。
 俺のせいで。
 死んだのか。

「くそッ、こっちもやられてる!」
「怪我人が居るぞ、至急救護班を――」
「空軍の要請はまだかッ!」
「とっくにやってます! 被害が甚大で、手が割けないようですッ」
 誰かの声が、遠くに聞こえます。
 その後ろから、別の誰かが、青年の名前を呼びました。
 
 ダメだ。
 此処に居たら、ダメだ。
 皆して、ひき潰されるだけだ。
 だから、逃げろ。
 逃げろ。
 どうして、皆、逃げないんだ。
 
「可動橋はどうだ!?」
「ダメです! 今降ろしたら、敵の第二陣が!」
「くそッ、これじゃ逃げ場がないッ」
「怪我人は可能な限り救護庭へ搬送を――」
「やめろ、下手に庭を出すな、連中の魔法で叩き落されるぞ!」

 え?
 
 誰かが、彼の背中を摩っていました。
 幼馴染みの二人。
 会いたかった筈の二人。
 起きて、と、涙声で何度も青年の身体を揺らしています。
 
 逃げ場が、ない?
 
 幾多の矢が、弾丸が、魔術が、ウサギに向けられて。
 その全てが悉く、叩き落されます。
 熟練の冒険者達も混じっている筈なのに。
 全く、敵の歩みを止めることが出来ていないと言う、事実。
 
 
 
 “なんだ、この悪夢のような世界は”



 ウサギが、ゆっくりと、玉を転がし、彼らに迫ってきます。
 後ろの家ごと、彼らをひき潰すつもりなのでしょう。
 
 彼は、思いました。

 普段狩られる側だもんな。
 たまには人間を狩る側に回りたいよな。
 そうだな、解らんでもないさ。

 でもな。
 
「やってやるよ」

 彼は、願いました。
 
 皆を護るための力を。
 その胸に在る志を、貫き通すための力を。

 手を天高く翳します。
 何故だか起動方法が解るのは、輝石の力なのでしょうか。
 イメージが頭に。頭から身体に。瞳から爪先まで。じいんと、満ちていく感覚。
 
 
「――ウェイク、アップ」


 そして、彼は、口にしたのです。
 
 
 
 
 
 
 彼の生涯の中で「言わなきゃ良かった」と思える台詞ベスト5に初登場にして堂々ランクインを果たした、その言葉を。
 
 
 
 
 

 ********************
 
  <Act:3>
  
 ********************
 
 
『光が彼の身体に纏わりついた。
 粒子状に分解される、槍と、服。
 初めは軍服。次にズボン。手袋。革の靴。靴下。そして、下着までも。
 
 一糸纏わぬ姿となった彼の手には、輝石を核とした杖が有り。
 その先から魔力を糸として織り成され、リボン状に伸びた布が、
 腕にするりと巻きつき、彼の身体中に伸びて、鎧を成した。
 
 腕先から膝元までを包む、黒のドレス。
 その上に紡がれたのは、白のフリルつきエプロンを模した、高性能のバリアジャケット。
 胸にはピンクのリボンがあしらわれ、可愛らしさを醸し出している。
 足を包むのは真っ白なニーソックス。その先には、黒のハイヒール。
 機能美と上品さを兼ね添えたその姿。そして、髪には、純白のフリルカチューシャ。
 輝石が輝き、彼の変身が完了したことを告げた。
 
 今ここに。
 魔法少女ケミカル☆ライ子が、誕生したのであr』
 
「うおおおおおおおおおおおそれ以上言うんじゃねえええええええええええ!!!」


 ええ、まあ、妖精に殆ど言われてしまいましたが。
 概ね、上記のような――そう、ちょっとお茶の間に流すと微妙な空気に支配されてしまいそうな、もしくは「このSSには暴力的な、或いはグロテスクなシーンが含まれて居ます」と明記しないと法に触れてしまいそうな、そんな光景が展開されました。
 だって真っ裸ですからね。それは危険ですよね。色々。
 
「ってか妖精、アンタなんでピンピンしてるんだよ!!!」
『え? ああ、インビジで隠れてた』
「おま、さっきぐちゃって、それにあの赤いの、あれは何だ!?」
『君をその気にさせるために、赤色ペンキをデコイにしてみたんだが』
「ちょwwwwwww」
『まあまあ。中々……ククッ……似合ってる、ぞ?』
「笑うなああああああああああああああああ」

 余りといえば余りな仕打ち。
 でも仕方がありません。彼、不遇ですから。
 
「一言で片付けるんじゃねえええええええええええ!!」

 ナレーションに突っ込みを入れないで下さい。

 公衆の面々(身内含む)に裸を見られた上、現在進行形で女装プレイ(しかも外見はほぼメイド服)と言う状況に、流石の彼もコメカミが引き攣っていました。
 ま、仕方ないですよね。周りも、かなりの勢いで引いてますから。敵である筈のウサギですら、その動きを止めています。
 
『さて、ライ子』
「あれか? コキュッとしていいか? 首」
『苦しい、苦しい。そんなこと言ってる場合じゃ、ないだろう』
「大体何だよコレ。俺、槍使いだぞ」
『大丈夫だ。輝石はその人間の特性に対応する。
 試しに“マジカルモード”と言ってみt……苦しい、苦しい』
「ほーらもう直ぐいっちゃうぞー」
『いや……、冗談で……なく……こふっ』
「あーもう言えばいいんだろう言えば! マジカルモードッ!」
“Magical-Mode : Stand-By.”
「え、今の誰の声!?」

 既に突っ込み過ぎて疲れが出始めていた彼の手に、輝きが溢れます。
 輝きの元は、勿論、杖。
 ソレの初めの形は、輝石の周りに翼をあしらった金細工、その根元からステッキが伸びていると言う、胸に在った時と殆ど変わらない姿でした。
 ですが。
 
「マジ、か」

 まず、翼が広がり、その淵から二条の光の刃が伸びました。
 その狭間に、緑色の光が集まり、ひとつの刃となりました。
 その光が無ければまだ、杖と形容出来たかもしれません。
 けれど、今のそれは。
 柄の部分はゆうに自身の背ほどの、刃は片腕を越える長さを有し。
 その大きさと姿以上に、内に秘めた「力」を感じさせる、光の槍と化していたのです。

「――嘘だと言ってよバーニィ」
『二度目だぞ、そのネタは』




 と。今迄動きを止めていたウサギが、ようやく我に返ったのか、彼らに向かって再び玉を転がし、迫り始めました。
 そう。状況は何も変わっていないのです。
 ウサギが、未だ健在だということも。
 彼の後ろに、沢山の人が居るということも。
 そして、このままでは、皆、ウサギの手によってやられるだろうということも。
 
 変わったのは、彼一人。
 
 けれど、それで、充分。
 
「妖精」
『何だ』
「コイツの名は?」
『輝石のことか』
「そうだ。よく解らねーけど、意志とかあるんだろ、コイツ」
『ああ。 型式番号XII、コードネーム“Hal[ハル]”。それが、その杖の――輝石の名だ』
「オーケィ。それじゃ、行くぜ、ハル」
“Yes, Sir.”


 その場に居た誰もが、信じられなかった、未来。
 誰かが助けてくれるなんて、信じられなくて。
 自分たちでは、何も出来なくて。
 無力さを噛み締めながら、終焉を迎えるのだと、思わざるを得なかった世界。
 
 それを、ぶち壊す存在が、ここに居た。
 
 
 
 
 
 
 
 
『吹ケヨ黒キ風 駆ケヨ八咫ノ烏 彼ニ齎セヨ終焉ノ旋風――』

「いっけええええええええッッ!!!」

“Dark-Whirlwind Ready!”








 一秒。光の穂先に、相反する力、闇の渦が集まります。

 二秒。膨れ上がった闇の渦は、漆黒の鳥を模り、翼を広げます。

 三秒。妖精の韻律、杖の起動音と重ねて、咆哮が空間を満たしました。

 四秒。彼の槍が、ウサギに向けて振り抜かれ。
 
 
 
 五秒を待たずして、ウサギの姿は、闇の中に喰われ、消滅していました。








「……ライさん」
「ライはん……一体……」
「て……敵、完全消滅を、確認……」
「……負傷者の救護、急げ」
「ハッ」

 呆然と、彼を見遣る者。
 戸惑いながらも、自らの職務を果たさんとする者。
 その中で唯一、空を見上げている者がいました。
 
 ライ・カーテット。
 否、魔法少女ケミカル☆ライ子。
 
 鋭くなった五感が、彼の耳に振動と、敵の存在を知らせます。
 まだ、終りじゃない。
 そう感じていたからこそ、彼は妖精を仰ぎ見、呟きました。
 
「後、何体だ」
『……』
「オイ、聞いてるのか?」
『選択肢は二つある』
「?」

 妖精は、笑っているようでした。
 ですが、同時に震えているようにも見えました。
 それを見た彼にも、今から彼女が告げようとしていることは、余り良くないことだと察知出来てしまうくらい、彼女の様子は変だったのです。
 
 そして、彼の予感は的中しました。
 
『現在この街に侵入したウサギは5匹。
 中核を成す巨大なウサギが1匹とその眷属4匹。
 君が今倒したのは、眷属の1匹に過ぎん』
「何だと……」
『魔法少女に成り立ての君では、核は倒せん。
 故に、眷属の残りの3匹を倒してもらうつもりだった。
 身をもって知ったと思うが、今の君の力でも、眷属なら余裕で倒せる』
「………核とやらは、どうするつもりだったんだよ」
『私がやるつもりだった』
「どうやって」
『奴の内部に飛び込み、魔力を暴走させる。
 連中の魔力は膨大だが、同時に常にパンパンでもあるからな。
 起爆剤となるある程度の魔力が生成できれば、道連れにはでき――』
「道連れって言ったな。今」
『………忘れろ』
「忘れるか、馬鹿」

 青年の歯軋りが、妖精の耳にも聞こえました。
 彼の心の内が、輝石とリンクしている彼女の心に響きます。
 足りないのか。
 まだ、足りないのか。
 また、護れないのか、俺は。
 
 妖精の笑みが、一段と深くなりました。
 今にも、声を上げて笑い出しそうなくらい。
 
「何がおかしいんだよ」
『今のが、選択肢の一つ目だ。
 そして、良く聞け。もうひとつ、選択肢がある』
「……早く言え」
『君の力で核を撃ち抜く。単純だろう?
 眷属は、その名の通り核からの魔力供給で動いているからね。
 奴を倒せば、連鎖崩壊する』
「倒せないんじゃなかったのかよ」
『君の出力が、私が予想したよりも高かったから出来る賭けさ。
 とは言え勝算は10%あるかないか。加えて早急に葬らないと、
 眷属が暴れて被害が大きくなる。
 更に最大限まで力を開放するので、輝石が持たないかもしれない。
 一発勝負さ。外してもダメ。倒せなくてもアウト。
 分の悪い賭けだが、さあ、どうする』
 
 彼の心が、妖精の心に再び、響きました。
 
 決まってるだろ。
 
 彼の背中に、魔力によって小さな羽根が生み出され。
 直後、纏った風と共に、彼らは一瞬にして中空に飛び上がっていました。
 その視界に入ったのは、異常な大きさの――ギルド元宮と同程度の高さがある――巨大なライチー。

 ――やらせるものか。
 
 青年は、妖精を見て。
 妖精は、青年を見て。
 互いに、小さく頷くと、翼に意志を篭めて。
 
 
 かくて、青年と妖精は比類なき速さで飛び去り。
 残された者達は、彼らの居た場所を見上げて、ただ呆然と立ち尽くしていました。
 





「ライさん……下着まで……女物……」
「……忘れたほうがええよ、ファイミはん」






 ********************
 
  <Act:4>
  
 ********************


 アクロポリス。
 失われた技術の一部を用い、湖の中にシャフトを建て、その上に建造された巨大空中都市。
 加えて、シャフトが失われてもその存在を空中に維持出来るよう、飛空庭の技術がいくつも埋め込まれており、緊急時には可動橋を全て上げることで外敵の侵入を阻めるよう、設計されていました。
 全ては、護りの為の力。
 けれどそれは、設計上の問題もあったのでしょう、中央の制御炉が破壊されたら全てが止まってしまう、不完全な力でもありました。

 勿論、強固な防壁で護られており、人一人の力や、ちょっとやそっとの砲撃ではびくともしないだけの強度はあります。
 けれど、それはあくまでヒトを基準とした計算結果。
 人知を超える化け物には、通用しないものです。

 ウサギの「核」――巨大なライチー――は、真っ直ぐに中央ブロックを目指し。
 それを護る人々もまた、ひたすらに核を止めようと奔走していました。
 

「――チィッ。埒が明かんな」
「無理をするな、ルー。援軍が来るまで……」
「フッ。援軍などあると思うのか、この状況で」
「……。母上さえ、健在ならばな」
「言うな、兄者。
 ――奴の目を狙う。おまさ、援護を頼む」
「御意に」


「主砲、一斉射撃! 叩き込めッ!!」
「――直撃、だが。また防御されているようだね」
「くっ…我々ではあの障壁を超えられないと言うの!?」
「敵、魔力反応! 来ます!!」
「対魔防壁出力最大、総員対ショック・対閃光防御!!」
「持ってくれよ……フレイヤ」

 
「大佐――」
「……グレ、おぬしはまだ、命令無しでは動けんのですかな」
「いや。解っている。…俺は、今こそ俺の意志で動かなければならない」
「その通りでございますぞ。この未曾有の危機、おぬしが動かずして何とするのです」
「ああ。 ――大佐、見ていてくれ。きっと…この街を護ってみせる」


「全く。皆、生き急ぐのだから…困ったものね」
「ルドさん。俺も、そろそろ行くッスよ」
「……セージ君?」
「いや、俺なんか行ってもどうしようもねーとは思うんスけど。
 やっぱり、何もしないで待つのは、性に合わな――」
「………」
「  か  はっ、  ル ド   さ  ・ ・ ・ ?」
「暫く、其処で休んでなさいな。……後は、私が何とかするわ」


 彼らは、懸命でした。
 懸命に、戦いました。
 けれど、刃は届かず、幾多の魔術も弾丸も、凶悪な威力を誇る戦闘庭の光線ですらも、核にダメージを与えることは出来ません。
 それどころか、巨大なウサギの動きはどんどん活性化するばかり。
 
 それでも、何度も。何度も。何度も。
 諦めることが即ち死であると知っている彼らは、無駄とも思える攻撃を、繰り返しました。
 アクロポリス崩壊の時を、一分でも、一秒でも遅らせようと。
 
 けれど。それも、永遠には続きません。
 
 やがて、ひとり、またひとりと力尽き。
 抗うのを止め、その場にへたり込む者も、出始めた頃。
 
 一人のタイタニアの少女が、満身創痍の姿で空を見上げていました。
 手に持った槍は既に柄の部分が折れており、鎧も凹み。
 到底、戦えるような姿ではありませんでした。
 腕も骨が折れており、癒し手も周りにおらず。
 瓦礫の傍に倒れこんで、泣いていました。
 
「畜生ォ……、何も、できねーのかよ……」

 彼女は、戦いました。
 立派に戦いました。
 他の戦士達と同じように、最前線で槍を振るい、
 
 そして、蹴散らされた。
 
「兄貴…ィ。私、このまま、死んじまうのかな……」

 悔しさが胸に込み上げます。
 堪えきれない想いが瞳から溢れます。
 護れないことが。救えないことが。
 これ以上なく、悔しくて。

「畜生、…畜生……ッ……   ……え?」

 だから、せめて、願いました。
 この世界に、カミサマとか、そう言う存在がまだ居るのなら。
 どうか、皆を、助けて欲しいと。
 
 そう、願った矢先のこと。
 
 涙に歪んだ視界の先。
 輝くのは一陣の閃光。
 流星の如く飛来したそれが、ヒトであることを認識するのに10秒ほど、
 更にそれが誰なのかを確認するのに更に数秒を要しました。



「……あに、き?」


 
 隣に、同様に蹲っていた槍士が、空を見上げました。
 意識が尽き掛けていた白導師が、かすかに目を開きました。
 ひとり、ひとり、地上に居た戦士達の視線が、その光に集まります。
 
 その先に居たのは、一人の青年、もとい魔法少女。
 傍らに浮かぶのは、一匹の妖精。
 
 
「……ひでぇ。何だよ、全く無傷じゃねーか、あのウサギ」
『だろうな。通常の攻撃では、アレを傷つけることは難しい』
「どう言うことだ?」

 妖精は、静かに語ります。
 隣に浮かぶ、力を持つ者へと向けて。
 
『あれは、憎しみそのものだ』
「……」
『発端は解らない。誰が操っているのかも、定かではない。
 だが、兎も角突如、連中が生まれてきた。
 そして、幾つもの街が崩壊した。当然、死人も出た』
「……」
『この世界の人間は大抵、身内や、仲間を、連中によって殺されている。
 だから、放つ攻撃には憎しみが篭ってしまう。
 それでは、連中は傷つけられない。そして、負の感情は増幅する』
「……ひでぇな。銃でも、魔法でもダメなのか」
『概念的な問題なのさ。
 もしこの場で偶然地震が起こって家が倒壊し、連中に降り注げば、
 それは多少のダメージになるだろう。
 けれど、誰かが家を砕いて破片を飛ばしたら、そこには砕いた人間の
 意志が介在してしまう。
 原理は上手く説明できないが、ね』
「さっき言ってた、自爆ってのはどうなんだ」
『私の命が尽きた後に、魔力が暴発するように仕込めば上手く行くと踏んでいた。
 私と言う存在が消えれば、魔力は所有者の無い「ただの魔力」になるからね。
 ……尤も、奴の内部に飛び込むのは至難の業だが』
 
 ウサギは、光を放つ彼の存在を見つけたようで、ゆっくりとこちらに視線を向けます。
 ドス黒い想念が、その瞳から放たれていました。
 覗き見ただけで、呪われるような、強い怨念。
 
「なあ。何で、俺は連中を倒せるんだ?」
『君は、元々、この世界の住人ではない。もう、うすうす感付いてるとは思うが』
「ああ。まあ、な」

 余りにも自分の知っている世界と違いすぎる、この世界で。
 彼だけが力を抱くことの出来る理由。
 
 彼は、憎しみに染まっていない。
 
 何処か、他人事で。
 だけど、やっぱり、見知った人間が居たら、助けたいと思う。
 ともすれば都合の良い見方かもしれません。
 偽善者だと罵る人間が居るかもしれません。
 
 けれど、だから、彼は力を得た。
 

『アレを、赦せ』
「……」
『憎しみで生むことが出来るのは憎しみだけだ。
 連鎖は、誰かが止めなくてはいけない。
 この場でそれが出来るのは、ライ・カーテット。君だけだ』
 
 たった一回きりの賭け。
 恐ろしく分の悪い賭け。
 彼は、既に槍と貸した杖――ハルを構え、深く息を吐きました。
 
「オーケィ。行くぜ」
『待て。そのままでは、出力が足りない』
「…どうしろってんだ」
『……ケミカルモード。
 防御に回している魔力の大半を槍に転化する最強の攻撃スタイルだ。
 但し、装甲はその辺の服と大差なくなる。一撃食らうだけで危険に――』
「選択の余地はねーんだろ。なら、そう言えよ」
『まあ、その通りだが。忠告はしたぞ』
「うっせぃ。 ハル、ケミカルモードだ!」
“O.K. Chemical-Mode : Stand-By.”
 
 眩い光が、彼を包み。
 その服の端が光となり、砕け、そして槍へと転化されます。
 もはや、槍の穂先の部分、刃に当たる箇所の大きさは人一人分を越え。
 杖だった部分は面影もなく、その形状は突撃槍[ランス]に酷似したものに変わっていました。
 
 ライチーが、その巨体に似合わぬ俊敏さで鉄槌を振り上げます。
 その速さは先程倒した眷族の比ではありません。
 ――その顔が、にやり、笑っているように見えました。
 
『――待てよ、まさか』

 妖精が、不意に慌てたように、彼へと向き直りました。
 彼はと言えば、まさに今、先程放ったものと同じ技を放とうとしている最中。
 眩い光を帯びた穂先には、漆黒の闇の渦が集まっています。
 
『不味い、駄目だ! 奴の属性は光だ!
 ダークワールウィンドでは、奴には致命打を与えられない!』
「……」

 不思議なことに、青年は妙に冷静でした。
 勝算があるわけではなく。
 確証があるわけでもないのに。
 何故だか、彼には、その力の全容が感じ取れていたのです。
 
『聞いているのか、ライ――』
「大丈夫だ」
『な…?』
「信じろ」

 彼の手が、杖改め突撃槍を天高く掲げます。
 何度も踏んできた手順。何度も繰り返し刻んだ経験。
 必殺の――とは、言えないけれど。
 彼が最も好み、信じている技。
 
「これが、俺の最高の技だ」



 そして。ライチーの腕が、恐るべき速さで振り下ろされる、まさにその瞬間。






「ダーク! ワール! ウィンドォッ!!」

“Dark-Whirlwind [Chemical-Romance] Ready.”






 僅かに早く、槍から、闇が放たれました。








 ********************
 
  <Act:5>
  
 ********************


 その場に居た誰もが目を疑う光景。
 けれど彼だけは、その技の真の姿を知っていて。
 だから、再び高々と槍を天へ掲げ、力を集め始めます。
 
 ライチーの動きは、完全に封じられていました。
 
 放たれた闇の渦は、弾かれる筈だった。
 妖精も、周りの面々も、そう予想していました。
 けれど闇がライチーに触れた瞬間、渦が帯びていた強い振動が、魔法生物であるライチーを束縛してしまったのです。
 
 それが、彼の能力。
 
 闇の裏には、光がある。
 騎士と闇遣い、表裏一体の存在。
 故にこの技は、真の姿――裏までを顕現させた時に、初めてその真価を発揮する。

 穿たれた闇。
 集う光。
 誰もが知っている、簡単な属性の原理。
 
 闇は、地を喰らい、炎を飲み込み、風を澱ませ、水を汚す。
 ならば、闇を祓う力は、何か。
 

『――凄い』

 妖精が、呟きました。
 彼の手に在る突撃槍。そこに収束する力。膨大な、光の帯。
 
『だが……』

 けれど、それでも、恐らくは。
 
 彼女は、密かに予測していたのです。
 この技では、防壁は破れても、奴を完全消滅させるには至らないのではないかと。
 だから、ゆっくりと力を溜めていました。
 
 開いた穴に、飛び込むために。

「――ッ、オイ、妖精」
『……何だ』
「足りねーのが、解ってるなら、アンタの力も、貸せ」
『なっ』

 不意にかけられた声が、余りにも予想外で。
 思わず彼の姿を見た妖精は、その顔に、思わず動きを止めてしまいました。
 
 自信に満ちた、笑み。
 
「心が繋がってるンだろ? だから、アンタの思考、解る」
『あ……』
「大丈夫だよ。俺は、死なない。奴も、しっかり成仏させてやる」
『………』
「信じろっつったろ?」
『……フ。仕方ないな。乗りかけた船だ』

 足りないと解っていて。
 尚、そこに賭ける意味。
 彼女には、解りませんでした。無意味だとも思いました。
 なのに。
 いつしか、妖精は自分の計算よりも、彼の言葉を信じるようになっていたのです。
 
 
 
 
「ッ――ぐ、これが、全力、全開ッ……」
『まだだ、もう少し――』
「無茶――、言う、ぜ……!!」

 空を裂く光の刃。
 遠い彼方に在る、今はもう逢うことの出来ない、彼の姿。
 それを見上げる少女の瞳には、涙と、一条の光が宿っていました。
 
 彼が、其処に居る。
 だから、力になりたい。
 それは、純粋な心。憎しみを伴わない、まっさらな意志。
 ゆっくりと、手を虚空に伸ばし、ぎゅっと拳を握り締め。
 
「兄貴ィィィィィィィィィィィィィィィッッ!!!」

 絶叫。
 その意志を、声に、無形の力に変えて。
 
 彼が、ちらり、此方を見ました。
 よく見えないけど、そんな気がしたのです。
 だから、彼女も笑顔で、更に叫びました。
 
「そんなヌイグルミモドキなんて、一発バーンと、やっちまえっ!!」

 肺が痛みます。喉も、焼けるようです。
 けれど、気にならない。
 その手を伸ばすことが力になると信じて疑わないかのように、彼女は腕を突き上げ続けました。
 
 ひとり。
 またひとり。
 同じように、彼の姿を知る人間が、手を突き上げます。
 
「全く――、不条理だな。まあ、いい。後は、奴に任せるとしよう」

「彼に賭けるしかない……か」

「奴なら、或いは――やれるやもしれん」

「また、生き延びてしまうのかしらね……私」

 ひとつ。
 ひとつ。
 蒼い光が生まれ。
 天に舞い、彼に沿い、刃に交わり、輝きを増す。
 
 それは、遺されたヒトの意志。
 希望を願う僅かな心。
 当たり前の平和を、ひとときの安らぎを、
 切に求める彼らの想い。
 
 
 どくん。
 青年の胸が高鳴ります。
 どくん。
 心が震えます。
 どくん。
 腕に力が満ちていきます。
 どくん。
 槍が輝きを増していきます。
 どくん。
 前が見えません。
 どくん。
 涙が溢れて、見えません。
 どくん。
 だけど。
 どくん。
 もう、
 どくん。
 迷わない。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ――例え、この世界の「彼」が、既に喪われていたとしても










 彼らを護ろうという想いは、微塵も揺らぐことはないのだから――










「「「「いっけえええええええええええええええええええええええッッッ!!!!」」」」


“Nivelung Varesti!!”










 眩い白光が、辺りを包み。
 
 闇の渦を真っ直ぐに貫いた光の槍は、一瞬で、全ての憎しみを霧散させました。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ********************
 
  <Final Act>
  
 ********************
 
 

 夢を、見ていた。
 妙にリアルで、馬鹿馬鹿しくて、辛くて、哀しい夢だった。
 
 夢から覚める直前に、誰かが耳元で囁いていた言葉が、何故だか記憶に残っている。
 
『有難う。君のおかげで、この世界は変わる』

 それが、誰の言葉かは、思い出せないけれど。
 妙に、嬉しそうだったのは、覚えてる。
 
 目を開ければ、白の聖堂だった。
 ああ、そうか。また庭から落とされたんだっけ。
 いい加減慣れたもので、身を起こすと司祭にまずお礼を、って、何か妙な感覚が。
 
 あれ?
 
「もー、毎度毎度迎えに来る身にもなって欲しい…ブツブツ」
「今回は、君が突き落としたって聞いたよ」
「それは黄彩君の勘違いですっ」

 声が聞こえる。
 ヤバい。
 これはヤバい。
 
 何で右手にまだ突撃槍があるんだ。

 これって、ええ、もしかして、マジか。
 
「ほらーライさん、帰りま――――」
「………」

 止まった。
 ファイミと、その隣に居るのは、サングラスをかけた、ウァテスローブのタイタニア。
 二人とも、完璧に動きが止まった。
 
 畜生。
 夢だ。
 あれも、これも、夢なんだ。
 夢なんだ、と思いたい、んだけど。
 
 マジカルモードは、メイド服だった。
 ケミカルモードは、それより防御力が格段に下がっていた。
 そう言えば色んなところがスースーしたような気もする。
 それって、要は、なんか、物凄い認めたくないんだけど、
 
 
 
 背徳メイド服――じゃ――
 
 
 
 二人の口が、ゆっくり開いた。
 
 俺は、咄嗟に耳を塞いだんだけど、
 
 その唇の動きが、ばっちり、読めてしまった。
 
 
 
 
 
 
 「「ライ子、プッ。」」






 「くぁwせdrftgyふじこlp;@:!!!」
 
 
 
 
 
 
 その後、アップタウンを逃げ回る二人の姿と。
 彼女達をその格好のまま追い掛け回していて、気付いたら騎士団に包囲・連行されていた、哀れな不遇の姿がありました。
 まあ、ヒーローってのは得てして報われないものですから…ねえ?
 
 
 ともあれ。
 一人の魔法少女の活躍のおかげで、滅びかけていたひとつの世界が救われたのですから。
 ここは、ほら、ひとつ、
 
 
 『めでたし、めでたし』って、ことで。
 
 
 
 
 
 
「めでたくねええええええええええええええええええええええええええ!!!」






                                          ― Fin.

 ********************
 

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えいぷりるふーるダネ。
| ざれごと | 20:13 | comments(17) | - | ↑PAGE TOP
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コメント
まほう少女ケミカル☆ライ子!
まさにエイプリルフールにうってつけのネタですね!
面白おかしくて呼吸困難になるぐらい読ませてもらいました。

しかしカオス&マニアックですね、アル程度漫画やアニメを見ている私でもわからないネタがありました;いやはや残念;
しかしこれはいい、きっとネタブログ界の家宝になることでしょう、

最後にお約束で「ライ子、プッ。」
| ほたて | 2007/04/01 9:20 PM |
テラカオスwwwww
相変わらず文章力がお高いですね、感服いたしました。

いやもう、読んでるうちに、エイプリルフールなんてどうでもよくなっちまいますよ、コレ。

魔法少女ケミカル☆ライ子。
誰かイラスト書いてくれねーかな、背徳バージョンがいいなぁ、個人的には(ぇ


| グレ | 2007/04/01 10:30 PM |
ドキワクさせつつ各所に散りばめられた緩み
最高です

ながーい、あとで読もーとか思ってた過去の自分
おみゃーはバカだ!

これからもすばらしい作品を世に送り出しちゃってください!
| 闇莉 | 2007/04/01 10:36 PM |
連続投稿すんませんorz

ライ子のイラストがからくりパンダ工房にありましたよ、
ええ、それだけですw
| グレ | 2007/04/01 10:39 PM |
せかいは良くなるのよ。ぜったいに。
たちなさい!
―1耐久力だけ 回復します―

ハルちゃんがインテリジェントデバイスだったり
ライさんが人間の頃鈴蘭畑で死んでいたりと
様々な衝撃の事実が発覚しました
もしかしてハルちゃんはIBMな宇宙船とかけられているのではと勘繰ってしまいましたよ
ところでライ子ちゃんのお色直しは正直……いえなんでもないです(涙をこらえつつ


ところでニーベルンヴァレスティは弓を装備しても使えるので
是非キャリスさんにもやって頂きたい
いえ 別に他意はないんですよ? ですからこの背徳メイド服をd(鉛プレゼント
| シア | 2007/04/01 10:59 PM |
エイプリルフールネタ、素敵にいいお話でしたっ。
ところどころ気にしなければいい感じなシリアス路線。

まあそのところどころを読むとお腹が痛かったです。
とりあえず背徳メイド着せられた方の…えーと、冥福?を
祈っておきます、うん。あれ冥福違う?

後ハル君出番おめでとうっ
| あるす | 2007/04/01 10:59 PM |
う〜ん、背中よりも靴に羽ができたほうが再現できそうだな。

それはともかく、このクオリティーを四月バカ用のネタに持ってくるとは!!
もぅ、『魔法少女ケミカル☆ライ子』の正史はこれで良いじゃないですか。

……ペットはモモンガでいいとして、氷雪魔法使ってくる先輩は誰になるんだろう? あと雷使う友達とか。(夜○の主はもう居るから除外)

ライ君の「不遇言うな」が、某陰陽師の「孫言うな」と被って聞こえてきたのは、私だけでしょうか?
| 緋燐凰月 | 2007/04/02 1:18 AM |
>ほたてさん

 ギャグなのかシリアスなのか解らない話です。
 あえてジャンル分けをするならば、と言うことでテラカオスにしてみました。
 
 ネタは余りにも埋め込みすぎて本人にも完全に把握できてません。
 意識的な部分と無意識の部分も混ざり合ってます。
 家宝になるかは定かではありませんがいい先制攻撃になったとは思います。
 
 ライ子、プッ。
 
 
>グレさん

 エイプリルフールは、どんなことを書いても「エイプリルフールだから」と言う
 逃げ口上を使える最高の日ですよ。
 今日に間に合わせようと無駄に時間を費やしたかいがありました。
 
 ちなみにからくりぱんだ工房さんちはしっかり確認しました。
 何の会話もしていないのにネタが被る悲劇。
 しかしこれは逆に見ればライ子ウェーブが襲来していると言うことかも
 しれません。今がチャンスだぜ。
 

>闇莉さん

 やたら長くなりました。
 大筋は最初からあった筈なんですが、何でこんなに長くなったのか、
 自分でもよく解りません。
 多分電波のせい。
 
 それなりに面白く読んで貰えたなら幸いです。
 しかし、大抵勢いは一過性のものなので、次に出るのは当分先だと思います。
 それが私達のジャスティス。
 
 あと前回のコメントに気付くのが見事に遅れて申し訳ありません。
 さっくりリンク追加しましたので、今後ともよしなに。
 
 
>シアさん

 全部合わせて30にも満たない耐久力でも、竜は倒せるのです。
 ランクSクリアおめでとうございます。
 
 色んな伏線がこの機に乗じて表に出てきたという問題作。
 実際は嘘ぷーのコンボです。
 ハルちゃんもHalになったのは直前の出来事でした。
 
 ライ子、大人気。嬉しいなあ(何処かを見ながら満面の笑みで)
 
 キャリスに技を任せると、ギルティブレイクになります。
 地味って言うな!
 

>あるすさん

 いいお話です。そう、いいお話だったんです。
 ところどころは気にしなければライ子も幸せになれると思うんだ。
 
 その内新番組、魔法少女ケミカル☆ライ子Rとか、始まるかもしれません。
 更に露出が際どくなったライ子の活躍にご期待下さい。
 
 ……嘘ぷー(多分)。
| Reverier | 2007/04/02 1:19 AM |
おおっと僅かな間にっ。

>緋燐凰月さん

 靴に羽根とすると若干な○はに偏りすぎるかと思い、背中にしてみました。
 イメージはラブリー羽根(ピンク)。
 
 シャーマンの少ないネタブログ界において、氷雪魔法を使う人間を
 探すこと自体が至難の業です。
 雷ならスクロールで魔王も使えるんですが、
 
 ルベリエ:あんなのと友達だと思われたら色々困るだろう。
 
 とのことでした。残念!

 さて、これは正史になるやら、どうなのやら。
| Reverier | 2007/04/02 1:28 AM |
ついにやってきた準本家ケミカルライ子!!
これにて嘘ぷー丸出しのライ子を書いてしまった私も浮かばれるというものです。
誰もが待ち望み、そして発現した作品・・・
エイプリルフール?
え、嘘って言うのが嘘でしょ?
| フィアン3姉妹 | 2007/04/02 2:39 AM |
(・∀・)…

(・△・)……

(・□・)………

(・益・)テラカオス。


ちょっまお前何やってうはwwwwwwwww(混乱)
なんて文章力。なんて完成度。
ぶっちゃけコスチュームさえ考えなければ
すっごくカッコイイ作品だと思うんだコレ何これ(

荒ぶる鷹のポーズでまずツボり、
魔王とのネタの応酬で笑い転げ、
その変身描写で腹がよじれ、
熱くかっこいい展開と効果に心が震え、
何気に出演の他ブログメンツに感動し、
(兄貴、とライを呼ぶのはからくり〜のオゲーラさんだね)
もうね、何だこの大作。
最高に良かったけど最高に憎らしいwww

血涙流しながら爽やかな気持ちでいっぱいです。
ああもう最低これ何これ超好きコレ(混乱再び)


もう正史でもなんでもいいよもうww(言ったよ)
ともかく乙!!良いもん見せてもらった!
| ライ | 2007/04/02 5:25 AM |
>フィアン3姉妹さん

 誰もが待ち望んだのか、定かではありません。
 少なくとも当の主人公は余り望んでいなかったという噂もありました。
 ありましたが気にしないのが魔王クオリティ。

 ある種、呪いの書みたいなモノになってしまった本作。
 完全に嘘ぷーならば以後販売もされない筈ですが、はてさて。


>ケミカル☆ライ子

 テラカオスに始まり、ライ子 プッ。に終わる。
 そんなコンセプトで書き始めたら全く持ってその通りに。
 激長くなってしまったのは仕様です。

 本人の言により正史になり始めた本作。
 楽しんで頂けたようで何よりです。
 このまま怒涛のライ子ウェーブをブログ界に広めて行きたいと思います。
 さあ、皆さんもご一緒に。


  ヘ○ヘ
    |∧   荒ぶる鷹のポーズ!
   /
  
| Reverier | 2007/04/02 9:34 PM |
出遅れ ま した がっ。
一日のほとんどをこのSSを読み込むことに費やしたたゆとです(挨拶
脳内でムービーが自動再生されてます。脳味噌が未曾有のカオスです。

今の感情を一言で表すなら「言葉にできない」

ライ子、プッ。なんて言えないYO!
かっこよすぎ、面白すぎ、心ときめきまくり。
感動しすぎて涙腺が緩むアクシデント勃発。勃発というか頻発。

悲劇、は。ごめ、ん、なさい、まさかでしたorz
スマブラやってる場合じゃなかった、いややってて正解でした(遠い目
空想していたものより遥かに素晴らしい作品と出会えた喜びとかが全てを凌駕してますっ!名作過ぎだぜライ子!

っていうか、あれ、オg……アレ?
勿体無い役貰ってる気がするのですが、違ったら恥ずかしいのでベッドで突っ伏していたオゲーラをあばばばさせておきます。

オゲーラ「あばばばばばばばばばばばばばばばば
  ヘ○ヘ
    |∧
   /        (自ら自由落下しながら)」
| たゆと | 2007/04/03 4:27 AM |
ついに動き出しましたか…伝説の物語が…

いやはや、お疲れ様でした。なんだか波に乗り遅れてる気がしますがコメントしちゃいますよ。いぇあ。
このテラカオスの状況に身動き一つ取れないわが身が忌々しくてなりません…
…くっ!!なんかやらかしたかったぜ!!
そして何気にゲスト出演!?ありがとうございますありがとうございます!!
このご恩は忘れるまで忘れません!(

しかしあれですね
このお話、エイプリルフールでは済まされない辺りが恐ろしいですよね…
…ウフフッ!!
| レイニー | 2007/04/03 7:08 PM |
>たゆとさん

 本作品は毒電波を多分に含んでいますので、摂取量にご注意下さい。
 1日に30行が目安です。嘘です。適当です。

 彼が希代の不遇でなければただのシリアスなストーリーに
 なっていたかもしれませんがそこはそれ、彼だからこそ生まれた奇跡、
 そは英雄として語り継がれし一人の青年もとい魔法少女の物語。
 でもいいんです。エイプリルフールだもの!

 ゲストの方々は、「最強じゃないけど強力」と言う基準でピックアップ。
 最強な方々は既にお星様になってる気もしますが気にしない方向でひとつ。

 あ、ヒロインですよ、折れた槍持ってるタイタニアの少女は。
 ククク。


>レイニーさん

 嘘ぷー企画だった筈なんですが、全然嘘だと取られてないので、
 まあこれはこれで良いかなと思っている今日この頃。
 カオスこそが我が望み。

 何故かゲストを考えた時、白羽兄妹でも黒羽ペアでもなく、
 彼ら二人が候補に挙がったのでそのまま登場願いました。
 事前はおろか事後承諾すらないのはネタブログの法則ってことでひとつ。

 皆がライ子の雄姿を覚えていてくれれば、私は満足なのです。
 こうして広がっていくライ子包囲網。楽しいなあ! 
| Reverier | 2007/04/04 2:28 AM |
すごく今更ながら、コメント失礼します。

まず、我々をゲスト出演させてくれてどうもありがとう
ございました。
深く御礼申し上げます。

そして、今話題のライ子ちゃん……
ライさん、もしかして歌舞伎でいう所の女形(女性役の
男性俳優)の素質があるのかもしれませんな。

短いですが、それでは。
| フロースヒルデ | 2007/04/04 10:14 PM |
>フロースヒルデさん

 むしろ勝手にゲスト出演さすなと言われなくてほっと一安心。
 書いてるときは考えなくても投稿したあとに不安になる小心者です。
 でも安心すると調子に乗るので油断は禁物です。

 ライ子は、きっと恥じらいがあるから素敵なのです。
 完璧に女性らしく振舞われたら、きっとネタにならない。
 あ、本音が。
| Reverier | 2007/04/05 12:13 AM |
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